横溝正史
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内容(「BOOK」データベースより)
金田一耕助の探偵事務所で殺人事件が起きた。被害者は、その日電話をしてきた依頼人だった。彼女は、これから殺人事件が起きるかもしれないと相談に訪れたところ、金田一が戻ってくる前に青酸カリで毒殺されたのだ。しかも、その時、十二月二十日であるべき日めくりのカレンダーが何者かにむしられ、十二月二十五日にされていた。降誕祭パーティーの殺人を予告する犯人とは―(表題作より)。そのほか「女怪」「霧の山荘」の全三編を収録。本格ミステリの最高傑作。
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短編3本からなるこの本。
『悪魔の降誕祭』『女怪』『霧の山荘』。
『悪魔の降誕祭』にも『霧の山荘』にも何故だか女優さんというかなんだか有名な女のひとがでてきます。ついでに等々力警部も。
『悪魔の降誕祭』から順に、金田一耕助は躁、鬱、躁みたいなのだったような…。
『女怪』では金田一耕助像が音を立ててガラガラと崩れ去りました。
金田一耕助って、女のひとには一切興味がないと思っていたので、誰かに惚れるっていうことがあるのかってことにまずびっくり。
でもなんかとても潔くて、自分よりあっちのひとのほうがよっぽど虹子に釣り合ってるなと思うとすぐに見守る側にまわっちゃったりするし。健気だなあ。
でも惚れてるばっかりに、いつもの金田一耕助らしさを失っていたというか、論理的な人間性を欠いていたというか。感情のまま突き進んでるように見えなくもなかった。
こんな金田一耕助もいるんだという新しい発見です。
しっかし金田一耕助のパトロン、久保銀造って名前しか登場しないですが、どんなひとなのかなってちょっと気にもなる。
パトロンっていかがわしいやつだと思ってたんですが、そうじゃないパトロンっていうのもあるんですね。知らなかった。
『悪魔の降誕祭』ではやっぱり終盤が見所ですかね。
「いえね、由紀子ちゃん、あんたその紅茶飲む勇気がある……?その紅茶茶碗、いま由紀子ちゃんが警部さんのほうに気をとられているあいだに、このおじさんがこっそりと、ママさんの紅茶茶碗と由紀子ちゃんの紅茶茶碗と、おきかえておいたんだけど……」
この台詞で、今まで伏せてあった犯人がいっきにわかるわけですね。
なんかこういうの好きだ。
でも金田一耕助は、これを由紀子が飲まないなんて思ってるわけないじゃないかと思うと、金田一耕助って一体どういうひとなんだ?と改めて考えちゃいました。
『霧の山荘』は、特に印象の薄い作品だったような?
それにしても金田一耕助と等々力警部って仲良しさんなんですね…。変な感じ。