乙一
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内容(「BOOK」データベースより)
目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。
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なんか乙一が書く主人公って、陰険な子多いですね。
とか思うひねくれた子は私だけかな。
『Calling You』
友達がいないリョウが頭の中で思い描いた携帯電話に、ある日突然電話がかかってきて…とかいう乙一らしいっちゃらしい設定のお話。
出た暗い子…とか思いながらつらつら読みすすめて、読み終わった後には切なさが残りました。
基本ハッピーエンドが好きな人間なんで。
『失はれる物語』
序盤から切ない。切なすぎる。残酷、とも言える。
事故で、右腕の肘から先しか感覚がなくなってしまった主人公。
生きているのは辛いけど、動くのは中指が一本のみでは自殺も出来ない。
私はこんな夫を愛し続け、そして世話し続けることなんか出来るんだろうか。
って考えると、なんだかとても辛い。
先の見えない長い時間世話し続けることも辛いだろうし、世話してもらってありがとうもごめんなさいも何も言えない側も辛いと思う。
こんな作品を書いてしまう乙一が残酷だ。
『傷』
他人の傷を自分に移せるスゴイ能力を持ったアサト。
とても優しい子で、他人が傷つくと、自分も痛いような気になってしまう子。
優しいばっかりに傷付くことも多いに違いない子が物理的にも傷ついてしまうのです。
この話は読んでる途中が辛いけど、最後まで読みきるとなんだかほっとします。
『手を握る泥棒の物語』
ちょっとコメディタッチとゆうか。
おもしろいのでなかなか好きです。
『しあわせは子猫のかたち』
サキさんの性格がなかなか可愛いです。
目を離してる隙にアクションを起こしていて、見ている間には決して存在を現さない、ってゆう辺りがちょっとだけ『平面いぬ。』に似てるかな、なんて思ったり。
サキさんが生きてたら、主人公とは出会ってなかったかもしれないし、出会ってても交流は持てなかったかもしれない。
そう思うとちょっと切ない。
『ボクの賢いパンツくん』
これといって山もなくオチもない。
『マリアの指』
出だしはうんうんと思いながら読み…、中盤はちょっとぐだぐだ。あんたらいつまでマリアの指探してんの。いつまで同じこと繰り返すの。って思った。
終盤になってやっと、おおぉって思った。やっとオチきたー!みたいな。
中盤のぐだぐだに耐えて最後まで読めたら、面白い話だったと思う。
『ウソカノ』
なんじゃいこりゃあとか思いつつ。
後書きじゃないんかい、みたいな。
これまでの話に比べたら、ランクはちょっと落ちるかな、と。
表紙なんかも味があって好きです。