津原泰水
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内容(「BOOK」データベースより)
定職を持たない猿渡と小説家の伯爵は豆腐好きが縁で結びついたコンビ。伯爵の取材に運転手として同行する先々でなぜか遭遇する、身の毛もよだつ怪奇現象。飄々としたふたり旅は、小浜で蘆屋道満の末裔たちに、富士市では赤い巨人の噂に、榛名山では謎めいた狛犬に出迎えられ、やがて、日常世界が幻想地獄に変貌する―。鬼才が彩る妖しの幻想怪奇短篇集。
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どこかで紹介されていて、タイトルとその紹介の仕方からなんだか面白そうだな、と思って購入。
しばらくほっておいて本棚の肥しにしてましたが・・・勿体ない!
フリーターの猿渡と、伯爵と綽名される全身黒尽くめの小説家は、豆腐好きが縁で仲良くなる。
そんなふたりの奇怪な短編集。伯爵はたまに出てこないけれど、猿渡はずっと出てくるので主人公はきっと猿渡。このひとの一人称でもあるし。
オカルト知識も深く読んでて楽しいです。
文体もさばさばしていて、私はこういうの好きです。
『反曲隧道』
いきなり超短い話です。
津原泰水の本は初めて読むから、どれどれ・・・ってな具合で読んでたのに唐突に終わってしまった。
でもこのせいで私は完璧にこの作品に引き込まれてしまいましたね。
やられた感が。
サニーを売り払い、知人に安く売ってもらったシトロエンに乗ってあるトンネルを通ると。
という話。
『蘆屋家の崩壊』
豆腐食い道楽の旅の途中、猿渡が大学時代付き合っていた美人、秦遊離子が住んでいるらしい福井県小浜市の近くまで来たとゆうことで、調べて電話を掛けてみる。
すると、是非来てくれと社交辞令とも言えない誘いを受けて、行くことにしたけれど、まるで迷路のような道のり、家族は兄妹のみならず父母も皆遊離子と同じ顔をしている。
・・・小浜といえばこの手の話で絶対出てくるのが八百比丘尼ですな。
今回はフィアットのパンダに乗ってます猿渡。炎上しますが。
伯爵、とかゆうから怖いひとを想像していたけどこの話でいきなりその想像はひっくり返されます。とても穏やかで物腰も柔らかい可愛いひとです。
『猫背の女』
コンサートの会場で、猿渡は通路に座っていた女に席を譲ってやる。
その日の深夜、その女から電話が掛かってきた。
顔すらまともに見てないその日出会った女からいきなり電話が掛かってきた時点で既に怖いって。
とにかくそのサトウミチコだかサイトウミチコだかカトリイチコだかよく覚えてないような女と一度映画を観るわけだけど、またこの女は馴れ馴れしい。
ストーカーものってリアルに怖いし読んでると腹も立ってくるし、早く結末を教えてくれ!みたいな焦りも沸いてくる。
ひと段落ついて、これで終わったのかな?と思わせておいて、すごいオチもついている。
『カルキノス』
伯爵、ついに探偵業にも進出ですか?的な。もっとやればいいと思う。
蟹の美味さを力説して、なんとかして静岡に一緒に猿渡を連れて行こうとしている伯爵。可愛らしい御人です。和みます。
そして今回の車は真黄色のビートル。いいな。赤のビートルがほしい。
それにしても猿渡、貧乏そうな感じがするのに豆腐と車に関しては金を惜しんでない気がする。羽振り良過ぎ。
『超鼠記』
・・・え?
と。
結末らへんまで読んでとりあえず思う。
ひとによっては、何だこれはっ!って怒り出すひとがいてもおかしくないな、なんて思ったり。
まあ、アリでしょう。
私はありさのこと、鼠に育てられでもしたのかと思ってましたが。
それにしても、蛭川・・・病気とかの心配はしなくていいのかな。
『ケルベロス』
この話は結構好き。臨場感がある感じで。あと、何故村が突然二十年前から不幸に見舞われ始めたのか。の謎が解明されてきたくだりとかがよかった。
オチはいまいちよくわからなかったけど・・・。
『埋葬虫』
気持ち悪い、の一言。
とにかく気持ち悪い。
虫を、食うな。
美男子なんだから。
『水牛群』
フリーターをやめ就職した猿渡。
ここ2年伯爵にも会っていない。
そんな猿渡に起こった不幸。
社長の遣い込みによる“会社ぐるみの虐め”のため、猿渡の書類作成のミスとかゆう無茶苦茶な理由をでっち上げて押し付け馘首する。
その日から猿渡の不眠は始まり、拒食も始まる。
目も爛々としておかしくなってきた頃、食欲はないけど食ってみようと頑張った猿渡が蕎麦屋で倒れ、夢現のままに伯爵を呼んでくれ、と店員に言う。
伯爵はとんできてくれて、そのまま病院へ。
病院へのタクシーの中で、明後日取材に行くのだが一緒に行かないか、と言う。編集者と行くよりやっぱり猿渡さんと、と。
夢現の猿渡の一人称で話は進むので、こちらまでもやもやしてきます。
面白い本、でした。
読み終わったら朝の5時。びっくりした。
津原泰水の本、また探してみようかな。