三浦しをん
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内容(「BOOK」データベースより)
古書店『無窮堂』の若き当主、真志喜とその友人で同じ業界に身を置く瀬名垣。二人は幼い頃から、密かな罪の意識をずっと共有してきた―。瀬名垣の父親は「せどり屋」とよばれる古書界の嫌われ者だったが、その才能を見抜いた真志喜の祖父に目をかけられたことで、幼い二人は兄弟のように育ったのだ。しかし、ある夏の午後起きた事件によって、二人の関係は大きく変っていき…。透明な硝子の文体に包まれた濃密な感情。月光の中で一瞬魅せる、魚の跳躍のようなきらめきを映し出した物語。
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三浦しをんの作品を読むなら、一冊くらいBL的な本を読まないと駄目だろ。っていうか、一冊どころじゃなく読みたいだろ。
「
風が強く吹いている」もBL的要素があるとか言ってるひともいたけど、私はそうは思わなかったなあ。
まあこれもBLっぽい要素がにじみ出てるけど、ほんとにそうだとも思えないよな。
三浦しをんの文章、もとから粗野だとは言わないけど、これはずっともっときれいに書こうきれいに描こうって意識してかかれたもののような気がする。
たしかにそんな文章が雰囲気出して淫靡に思えるのかもしれない。
一緒に布団並べて寝る、シーンが飛んで朝になる、が数回出てくるけど、その空白の一行に、読者の、もしかしたら作者のもだけど、妄想を詰め込もうとしてるような気がするのは…邪推?
三浦しをんもBLが好きとかいうひと。たぶん普通の漫画読みながら、誰かと誰かが一緒に近くで寝てるシーンってだけで、変な想像と妄想してんじゃないか。それをこの作品で意図的にやらそうとしてんじゃないか。はは。考えすぎかなあ。
でもまあ相手のこと考えただけで赤くなったり、髪の毛くしゃってしょっちゅうやる男同士って、あんまりいないよねえ。
「水底の魚」ではなんというかもやもやもやもやもやもやもやしてて心がスッキリしないと。
まとりあえず真志喜ちゃんは好きだ。
「水に沈んだ私の村」のほうが高校生なだけ正直なんじゃないか?
なんか、お互い好きなんじゃないかっていうのが、傍目にもわかる。
ただそれを本人達はわかってない。
瀬名垣は薄々わかっているのかもしれないけど、真志喜は絶対にそれをわかってない。そういう感情はいけないことなんだと、封じ込めようとしている?というか、高校生だからそこまで難しくはなく単純に、『好きな人に、告白もしてないのに好きな気持ちを知られたら恥ずかしい』、そのテの感情ではと。
でもあんた、好きなのバレバレだよ、みたいな少女漫画的な。
たぶん真志喜はそのままで大人になったのに、瀬名垣は隠すのが上手くなってしまったんじゃないかな。
もともと真志喜はそういうの気付けないタイプだろうけど。
なんてもどかしい本なんだ。
ちょっとすっきりしないから、私みたいなタイプには向いていないと思われる。